この旅行社のバスツアーを利用するのは何度目だろう。
直近では、伊勢志摩観光と的矢牡蠣を味わい尽くすグルメツアーが思い出される
そして今回の、上高地でのホテルランチと散策ツアー。

このツアー最大の魅力は何といっても使用するバスのゴージャス感ではなかろうか。
「ロイヤルクルーザー四季の華」と称する、本来なら40~50名乗りの観光バスを、定員16名に改造した、本革張りの豪華なゆったりシートに身を沈め、のびのびと足を投げ出して寛ぐ満足感は、なるほどに格別だ。
「このバスに乗ったら他のには乗れない…、」ツアー参加者が異口同音に発する言葉である。
料金設定とツアーの内容から、参加者は年配の方がほとんどだが、幸い小生も違和感なく溶け込める歳となっている。

実を言うと、ツアーという形態には違和感を持っていた。
見ず知らずの人たちと同行することの緊張感で、せっかくの旅が台無しになるのではないかといった心配からだ。
しかし、少なくともこのツアーに関しては全くの取り越し苦労。
それは自身の年齢のせいなのかもしれないが、ファミレスでの子供の騒ぎ声や無神経な大声での会話といったもののない、大人の世界に居られることで得られた安堵感であろう。

加えてツアーの魅力に、全部お膳立てされている安心感がある。
それをツマラナイと捉える向きもあろうが、道中のアクシデントさへ楽しみと感じられる歳ではなくなった。
おまけにガイドや添乗員による懇切丁寧な解説付きときたもんだ。
車窓から観える様々の、歴史的・文化的な背景とそれにまつわる逸話まで紹介してくれる。
頼みもしないのに…などと思ってはいけない、それもセットなのがツアーというものだ。

出発して間もなく、持参した缶ビールの栓を「プシュッ」としたのは言うまでもない。
参加者の誰もしていない楽しみに浸るのも、達人の心得である。

今年の梅雨は、文字通りの長雨だった。
この日も雨が心配されたが、奇跡的に現地に降り立ってから帰路に着くまでは曇り空でいてくれた。
ここは中央アルプス登山客にとっての拠点と聞く。
汗臭いひげ面の猛者たちと幾度もすれ違う。
缶ビール片手の物見遊山姿の己に、どこか引け目を感じてしまうのは、まだいくらかでも正気が残っている証か。

往路と同じく、東海北陸道を南下して集合地点の名古屋駅に着いたのは七時半。
構内に入ろうとすると、なんだか物々しい雰囲気だ。
スーツ姿でイヤホンを付けた男どもが、何人も辺りを見回している。
「何かあったんですか?」と隣の若者に尋ねると、なんと安倍総理が来名し、ついっさき目の前を横切ったそうだ。
すんでのところで姿を見ることはできなかったが、総理にはこのまま頑張っていただきたいとツクヅク思う。

さあ、次はどこに行こうか。
北陸もいいなあ。
きときとのお魚と旨い酒!
楽しみにアンテナを張っておこう。