夏の風物詩は数あれど、大相撲名古屋場所も外すことのできないひとつだろう。
この度、ひょんな成り行きで小生も観覧の機会を得たので、このクソ暑い中一日がかりの大イベントと洒落込んだ。

平日ならばいざ知らず、休日におけるこのチケットはまさにプラチナ級と言ってよかろう。
個人的に正規の手続きで入手するのは絶対無理と言ってよいほどだ。
今回はあるツアー会社のクーポン券として偶然に手に入ったものだが、ホテルでの昼食と相撲観覧がセットになっており、それをこなすには丸一日を費やすことになった。
それでも日常とは違う時間と空間に身を置くことはそれだけで魅力的であり、つまらない不平などいかほどのこともない。

名古屋城を間近に観るホテルでの食事は、バイキング形式のありきたりのものだが、壮大な石垣や満々と水を湛えたお堀、その周遊道をジョギングする人々を眺めながらの時間は、こんな仕事を生業にしている我が身には文句なしに贅沢なものだ。

食事後ほどなくして、ツアーコンダクターの先導で相撲会場である愛知県体育館を目指し10分程の道のりを徒歩で向かった。
中学生の頃の社会見学を思い出す。
気恥ずかしさどころか、むしろ懐かしい感覚で御一行様の行列に加わった。

一時過ぎには会場に着いたが、この暑さの中で時間を潰す場所もなく、覚悟を決めて相撲観戦三昧に身を投じる。
ようやく髷を結えるようになった力士達の取り組みは、物足りなさはあるものの、一生懸命さがかえって新鮮な感じがした。
しかしそう思って楽しんでいられるのもせいぜい二時間だ。
枡席の狭さは想像以上であり、次第に身の置き場のなさに苦悶することとなる。
それは両隣のお客さんも同様で、右に左に斜め座りと体育館座りを繰り返し、果ては正座に活路を見出す始末。
これが伝統スタイルとはいえ、料金的にホテルでのディナーショウとの落差を感じてしまうのは、無粋の極みであろうか。

ここはもうビールの一杯もやらずにはいられないが、飲めば飲んだで出るものは出る。
むしろ天の助けと、エコノミー症候群の予防も兼ねて用足しに立った。
ストレッチをし、気を取り直して席に戻るを繰り返すこと三回、ようやく土俵入りの時間に。
満員御礼の垂れ幕も下がり、場内は益々の熱気に包まれた。

しかし稀勢の里の姿はない。
言わずと知れた「休場」である。
小生にとって今回の目玉は、なんといっても稀勢の里と遠藤だ!
ところがどうだ、どちらも直前で休場してしまった。
「持ってけ泥棒」と叫びたくなるが、怪我ならそれも仕方ない。
こういうフアンの思いを背負って、養生に専念してもらいたい。

最近はテレビでは視られなくなったが、〆の弓取り式を観て会場を後にした。
家に着いたのが七時半。
それでも仕事は待っている。
予定通りの帝王切開をこなし、溜息をついたのが十時前。
もう限界だ。

贅沢ついでに行き付けの寿司屋でクールダウン。
生ビールの一口が死ぬほどに旨い!!!
この一杯に勝る贅沢があるだろうか。

打ち上げ花火的なイベントも楽しいが、終わってしまえばそれまで。
むしろ毎日の労働とそれを癒す一杯のビールにこそ、本当の幸せがあるように思った。
二日後には恒例の日本酒の会が待っている。
これ以上の何を望もうか。