バッキンガム宮殿における衛兵交代や、様々な式典での演奏を担っているのが、近衛軍楽隊だ。
いわゆる管弦楽団である。
その代表的なチーム(コールドストリーム・ガーズ・バンド)の来日名古屋公演に出かけてみた。
先ず目を引くのは、赤と黒を基調とした軍服のユニフォームだ。
大きな綿帽子のような帽子が少々ユーモラスで、メンバーの体型を四頭身の可愛らしいものにしている。
しかし世界に君臨した大英帝国軍の軍人としての威厳がその仕草の隅々から湧き立って来るのはさすがだ。
指揮者の腰にはサーベルが下げられ、いやでも軍隊のそれだとわかる。
往時には、戦場における兵士の士気を掻き立て、最前線で体を張る役目を担っていた。
そのため、指揮者は必ず2名体制を敷き、一方が銃弾に倒れれば、すぐさま交代をして演奏を続けるのだという。
その心意気は今も健在で、一般の楽団とは雰囲気が違う。
演目の基本は、やはりマーチである。
まさに威風堂々とした行進の様子を彷彿させる。
しかしそれだけでは単調過ぎると思っていたが、随所に変化球を放ち、女性ソプラノ歌手のソロに合わせたお馴染みのスコットランド民謡の演奏には心が動いた。
ただ少々違和感を覚えたのは女性歌手が韓国系の方で、歌唱力には申し分がないものの、伝統ある英国軍楽としての舞台では、やはり英国人で統一して欲しかった。
(決して人種差別の意味ではなく、単なる個人のビジュアル的な好みである)
フィナーレでは、舞台上の演奏と共に、観客席最上段からトランペットが吹き流され、音の奥行を増す演出に誰もが拍手喝采を送った。
今回の座席は最前列から6番目であったが、十分に臨場感を味わうことができ、満足のいくものであった。
こうした、非日常に身を置くことの大切さを認識させてくれるコンサートであったことに感謝した。
JRでの帰路、人身事故の影響で大幅にダイヤが乱れ想定外の遅れを被ったが、無事帰宅。
すぐさまビールをグビッといきたいところだが、入院動物の治療を優先させたのは言うまでもない。
好きな仕事とはいえ、因果なものである。