柳津にある酒販店「広瀬商店」は、全国から選び抜いたこだわりの地酒を豊富に取り揃え、入手困難な酒も取り扱うなど、
1450183754851日本酒党を唸らせるのはもちろん、ワイン通の間でもよく知られたお店だ。
柳ヶ瀬通りを会場に繰り広げられる、日本酒やワインを広めるフェスティバルにも積極的に参画し、地域振興にも大いに尽力している。
ここで開かれるイベントの一つに「猟師の会」があり、参加してきた。

三重県に住まう狩猟家が仕留めた獲物を、自ら調理して振舞い、同時に店主お勧めの日本酒を飲み比べるというまことに贅沢な趣向の催しである。
1450183776952145018381521714501837935381450183850837 1450183865949 1450183873639 1450183892117 1450183900732 1450183801745この日は、鹿に猪そして鴨といった定番の食材ではあったが、肉はもちろん心臓や内臓、脳ミソに至るまで丁寧に前処理が施された材料をその場で切り分け、網焼きバーベキューや揚げ物、鴨すき、はたまた刺身でと、バラエティーに富んだ料理にして提供してくれる。
中でも、骨も筋もすべての部位をミンチにし、余すところなく利用したミートソース風煮込みの濃厚な味わいは絶品であった。
まさに彼の料理人をして「捨てるところがない」と言わしめるに相応しい料理となっていた。

最近、害獣駆除に絡めたジビエ料理普及への官民挙げた取り組みがよく話題に上る。
県内のホテルや玉宮辺りの料理屋でも、この運動に手を貸すところも散見される。

しかし小生には拭えぬ違和感がある。

それは、ジビエに対する西洋人との宗教や文化の違いも関係しているのかもしれないが、
もっと違う基本的な何かが引っ掛かっているのだ。

しかし我が国にも、古くからマタギという狩猟採集の文化がある。
彼らは、山に入る前には山ノ神に礼拝をし、山の幸、命をいただくことへの感謝と、自然への畏敬の気持ちを捧げていた。
同時に、いただいた命は何も無駄にしない「もったいない」という心が、それら獲ったものを皆で分け合うという習慣ともなっていた。
その心は今も息づいていて、我ら日本人の精神の遺伝子に組み込まれているように思えてならない。

こういった日本人の心を無視して、排除した邪魔者の有効利用を掲げても、その普及は難しかろう。
こじゃれたレストランで、皿の上に美しくデコレートされた肉片を見ても、ただの廃物利用としか映らない。
出された料理の向こうに、日本人の感性に訴える、そういう精神と感謝の心が感じられてはじめて、
ジビエを美味しくいただくことができるではなかろうか。

今まで燻っていたモヤモヤノの正体が、その輪郭を浮かび上がらせてくれたイベントに思えた。