ハナミズキの葉が紅く黄色くその色付きを深め、早くもチラリちらりと枝を離れ始めた。
枝先には艶のある朱色の実が、秋の陽光に照らされ揺れている。
単に歳を重ねたせいだろうか、今年の秋は駆け足でやって来て、私などまるで居ないかのように、振り返ることもなく通り過ぎて行きそうだ。
例年なら、盆栽の葉すぐりを終えている時期なのだが、まだ放りっぱなしで、浪人侍の伸びたさかやきのように古葉を晒し、だらしなく佇んでいる。
今まで当たり前にしてきたことが、当たり前ではなくなり、何事に対してもその意味や価値といったものを再度見つけ直す作業が付きまとうようになってきた。
初老性うつとか男性更年期とか、世間では面白可笑しく騒いでいるが、ひょっとしたら我が身にもそういった何かしらの変化が生じているのかもしれない。
しかしそれはまた、過去を見直し、待ち受ける人生の未来をじっくり考えるための試練ととらえることはできないか。
良しにつけ悪しきにつけ、起こる結果には全て理由がある。
そしてその理由の99％は自分が蒔いた種だと言われる。
確かにそのようだ。
いずれにしろ、今こうして健康でいられることが全てであり、最高の贅沢ではないか。
そう考えよう！
還暦を迎え、己の風貌もそれなりの変化を遂げた。
そんな歳になったからこそ、今までできなかったことが、上手にできるようになることもあるだろう。
構えず、妙なこだわりも捨てて、自然体で過ごす人生。
自分を支えてくれるすべての人々への感謝の気持ちと共に。
