その日を心待ちにしている酒の会がいくつかある。
昨夜はそのひとつ、第338回「季節の美味しさと日本酒を楽しむ会」に出かけた。
338回…、気の遠くなるような歳月の積み重ねである。
毎月欠かさず開かれている。
主宰である「酒の中島屋」店主、西川氏の日本酒普及にかける想いにはただただ頭が下がる。
店によって参加者の顔ぶれは大きく変わる。
今回は、ひなびた風情(端的に言えば場末)の居酒屋ニューナガズミ。
気取った小料理屋、料亭もイイが、こうした赤提灯に縄のれんといった一種こ汚い居酒屋こそ、酒飲みの心をくすぐる本道ではないか。
そこに集う猛者こそ、本物の酒飲みなのである。
おっと、
本題に移ろう。
酒飲みにとって、切っても切れない相棒が酒器である。
酒は酒器によってその味を変える。
それは物理的ないしは化学的な作用と、人間の五感に響くハーモニー。
この会の常連にはにユニークな方が多い。
その一人に陶芸家の水野氏がいる。
氏は、「陶漫画」という境地を追い求めておられ、精密に作られた祭りの山車は圧巻であるが、中でも「福うさぎ」や「福ろう」シリーズは人気作品だ。
当然、名のある陶芸家との親交も厚い。
しばらく前に、氏の親しくしている作家の手によるぐい吞みを、ついでをみてお世話いただけないかと頼んでおいた。
それっきりその話題は途絶えていたが、ついに今夜ご持参くださった。
多治見の有名作家の作ともなればけっして安くはないが、氏の顔で破格の値でお分けいただいた。
良いものに理屈はいらない。
とはいえ、一通りの解説をいただいたうえで早速使ってみた。
しっくりと掌に馴染み、持ち飽きしない。
目にも楽しい。
酒の味も一つ上へと変化する。
五年も使い込めばいい味が出るよ…。
そんな嬉しいアドバイスに、ますます酒が恋しくなる。
「こいつが俺をダメにする」
そんなセリフが頭をよぎったが、それならそれでいいじゃないか。
小生も今年から年金受給者。
楽しみが沢山あることの幸せを噛み締めながら、これからの余生を送りたい。