岐阜県獣医師会では、主に小学生を対象に「命の授業」と銘打った出前授業活動を行なっている。
当初は、獣医師会に集う各職域の代表者が、自らの職業を通して命の大切さを考えてもらうという、七回シリーズのものであった。
しかし現在ではキャリア教育として利用したいとする学校の要望に沿って、ある部分だけを切り取ったインスタントなものに変化してしまったのが少々残念ではある。
小生も先日、岐阜市のある小学校に講師として出向いてきた。

この手のものは過去にも数回の経験があるが、その時は1・2年生が対象で、幼子相手に話の組み立てや話題作りに苦労した記憶がある。
今回は4・5年生ということだったので、ほとんど大人と同じ語り口調で済み、かえって気が楽であった。

獣医師の就いている主な職業の紹介から始まり、学生時代の実習の思い出、そして現在の当院における悲喜こもごもをお話した。
中でも、牧場実習での牛のウンチが甘い味がした経験とか、胃袋は200ℓもあるとか、人工授精の意味など、また当院が力を入れている爬虫類の話には目を輝かせてくれた。

子供は正直であるが、幸いにも誰一人アクビもよそ見もせずに、終りまで話に付き合ってくれたことに感謝した。
最後の質疑応答に立った動物飼育委員長の少女に、「貴方も獣医師になって私の病院に来てください」と言ったとき、
しっかりと私の目を見詰め、力強く「はい!」と応えてくれた姿が忘れられない。

私の話が、何かしら彼らの心に残したものがあったなら、この上もない喜びである。