先ず、狩猟における鷹狩りというカテゴリーは、銃猟と違って手掴み猟の扱いとなり、狩猟許可は必要ない。
それでも、実猟可能期間や対象動物は、狩猟法に定めに従う。

1452502418026鷹狩りと聞いて誰しもが思い浮かべる光景は、草原や広い川原での、ウサギやキジ、カモといった鳥獣狩りではなかろうか。
ところがどっこい、この時期(猟期)ともなれば、そういった現場は既に銃猟の洗礼を受け、獲物を見つけることは困難であり、動物の警戒心も絶頂に達しているので逃げられやすい。
しかし街中の用水や小川では、猟銃における禁猟区でもあり、カモたちも逆にリラックスしてそこここに小さな群れを作ってたむろしていることが多い。
ということで本日の鷹狩り前半戦は、カモを探して、街中の好条件のポイントを何箇所か回ることになった。
選手には、ハリスホークを抜擢した。

二時間ほどかけて何箇所かのポイントを試したが、敵もさる者そうやすやすと捕まったりはしない。
驚くのはその「知恵」である。

14525023499161452502377831第一に、鷹狩りといえど、野鳥を捕らえ殺す行為であることに違いはなく、人目を気にしないわけにはいかない。
絶好の場面でも、人の気配がしたがために断念することが度々である。
第二に、タカの多くは水に濡れるのを嫌うため、特に水深のある川面で獲物を捕らえることを躊躇するのだ。
ということは、水面スレスレを飛んで逃げればまず襲われることはない。
むしろ彼らにとって最悪のシチュエーションは、水面から高く飛び立って広い場所を目指した時である。
慣れたタカなら、確実にゲットするだろう。
そこで、こういう場所にいるカモたちは、高く飛び立つことをしない!
一瞬高く飛んでも、タカの接近を感知した瞬間、水面へと急降下してかわすのだ。
最も顕著な例は、石を投げて脅しても、絶対に飛び立たない群れもいるほどだ。

事々左様に、街中に居場所を構えるカモたちは、人間の存在を利用して安全を確保していると言ってもよいだろう。
まったく彼らの知恵には舌を巻いてしまうが、最近はこういう傾向が10年前よりはっきりしてきたというのである。
そういう行動様式が、遺伝子レベルで定着してきたのではないかとは、氏の言であった。

昼食を軽く済ませその後も狩を続けたが、休日で人出も多かったのと、タカ自身がなかなか思うように捕らえられない苛立ちと飽きも重なり、残念ながら空振りで本日の前半戦を終了することとなった。
それでも、もうちょっとで…という場面があったことは申し添えておきたい。

1452502235167後半戦は、郊外に広がる田んぼとそれに続く草原でのフライトショー、そして点在する藪での「キジ猟」に挑戦した。
先ずは、若いハリスホークに、投げた疑似餌を空中で掴ませる訓練から始まった。
やはり猛禽類の鷹である。
一瞬に獲物の位置と方向を見極め襲い掛かるスピード感と姿には、凄まじささえ感じる。

14525023274861452502427755続いてはハヤブサによる、ドバトの捕獲訓練だ。
ハヤブサに限らず、鷹類の持つその美しさと気品には、本当に痺れてしまう。
腕に止まらせ目隠しフードを取ると、既に臨戦態勢だ。
鋭い眼光をあたりに散らせている。
頃合を見て、用意したドバトを放すとほぼ同時にハヤブサを投げる。
これは疑似餌ではない。
しかしハヤブサの圧倒的な速さと、回転力の前には成す術もなく捕まってしまった。
ハヤブサはその鋭い爪で獲物の首を切りトドメを刺すという。
やはりその通り、あっ気なく昇天したドバトは、ハヤブサのこの日のご馳走となった。

一緒にやりましょう!
そう言って始めたのが、二人の腕から腕へ飛び移るゲームだ。
グローブを付け、ウズラの肉を見せならが軽く声をかければ、相手の腕を離れ一二度羽ばたいたかと思うと、スーッと低空飛行で瞬く間に腕に止まる。
少々の肉を食わせた後、それを互いに繰り返すという遊びだ。
こんな面白い思いをしたのは、何年振りだろう。
というか、経験の無い感動を覚えた。

1452502365465本日のメインイベントは、女性鷹匠の愛鷹「オオタカ」を使ってのキジ猟だ。
藪の中に潜むキジをポインター(猟犬)に追い出させ、それをオオタカに獲らせるというもの。
それにしても良く仕事をする犬だ!氏が7年をかけて訓練しただけのことはある。
サインに従い、順番に藪を攻めていく。

暫くした頃、一瞬犬の動きが止まった。
出せ!、の一言で犬が動くと次の瞬間、けたたましい羽ばたき音と共に一羽のキジが飛び立った。
すかさずオオタカを投げた鷹匠であったが、キジの動きの方がやや勝った。
オオタカは潅木の密集した藪に阻まれ、追跡を断念したようだ。

本日は、鷹狩りとしての目的は果たせなかったものの、小生にとってはまさに未体験ゾーンにはまり込んだ一日。
何もかもにゾクゾクしながら、新しい発見に感動の連続であった。
空を飛ぶ生き物、中でも猛禽という犯し難い威厳と風格を備えた存在がこんなにも近くに感じられたことは、単なる驚きを通り越して、魂を揺さぶられる思いがした。

14525024508251452502457051日も沈み、辺りが薄暗くなるのを合図に、大いなる満足を湛えながらフィールドを後にした。
その後は、新年会!
一宮駅界隈の居酒屋にしけ込んだ。
気取らない、肩の凝らない、構えなくてもよい、新しい仲間との酒!
今日一日の思い出話に花を咲かせ、
心地よい疲れとともに、生ビールの一杯がこれほど旨いと感じたことも久しぶりだ。

深まる酔いの中で、
いつか小生が愛鷹を腕に、仲間と供に鷹狩りを楽しむ日が来そうな予感を禁じ得ない夜となったことは、お察しの通りである。