酒飲みのくせに、カラオケというやつにとんと縁のない小生である。
どんな飲み会でも、カラオケを織り込んだものはまずない。
とはいえ、小生とて昭和の生まれ、頭にこびりついている歌謡曲は数知れない。
車の運転中にお気に入りのナンバーを流しながら熱唱することはあっても、ことさらカラオケルームに出掛けることなどはないのだ。
そんな小生に、またまた禁断の扉を開かせてしまった憎い人がいる。

146539766551214653976912461465397674856 1465397684343 K氏とのお付き合いは、かれこれ17年。
そもそもは、山登りに興味があった小生が登山仲間を探していたときに、たまたま見つけた山岳会の重鎮メンバーであった。
当時、仕事がらみの役職をすべて退き、今までとは違った生きがいを模索していた小生は、登山という挑戦と達成感そしてそこに漂う人生哲学に魅力されていた。
そんな小生を、少ない言葉の中に滲む優しさと積み重ねられた人生の厚みというべき度量で包み込んでくれたのがK氏である。
半ばディベートの繰り返しのような毎日を送っていた小生には、はじめから安心して話せる数少ない人であった。

幾度かの山行と懇親会を共にしたが、小生の役職復帰に伴い山岳会とのお付き合いも遠退き、ついには退会となってしまったが、有り難くもK氏とのお付き合いはそのまま続いている。
そんな中の、今回の飲み会だがK氏は無類の恥ずかしがりやで、男同士のツーショットが苦手、そこで奥様の同伴である。
一次会で少しメーターをあげて、いそいそとカラオケラウンジに場所代え!
K氏の奥様の趣味はまさにカラオケであり、高い授業料を払われた成果には目を見張るものがる。
思わず手の痛くなるような拍手を贈った。

当然ながら、小生にも一曲のオファーが来る。
ここ何年も人前で歌ったことのない小生であるが、K氏や奥様のお陰もあってトータル5曲ほども歌ってしまった。
小生のへたくそな歌に「心がこもっててよかったよ!」なんて論評を真に受けて調子に乗ってしまったのだ。

しかし、心がこもっていると感じさせた歌唱とはいかなるものか。
酔った我が身にわかろうはずもないけれど、頭がアルコールで痺れたオッサンの素直な想いが、聞き手のそんな感想を誘ったのかもしれない。
酒が小生に何を思わせたのか…。
いずれにせよ、ドラマの世界であることに違いはなかろう。